京極れきし再発見 5

  幸神社の娘が東北地方で神になった?
 
     
宮城県名取市笠島 道祖神社

 「源平盛衰記」という室町時代の書物に、「奥州名取郡の笠島の道祖神は、出雲路の 道祖神(今の幸神社)の女(娘)」だと出てきます。娘は、商人と勝手に結婚したために 勘当され、奥州(東北地方)へ下り、そこで神として祀られたとのことです。
 その笠島の道祖神に取材に行ってきました。神社は、宮城県仙台市の南隣、名取市 の町外れにある普通の田舎の神社でした。しかし、かつては「源平盛衰記」に載ってい る“藤原実方の伝説”が有名で、松尾芭蕉も「奥の細道」の中で訪れています。その伝 説とは、次のような内容です。

 平安時代の歌人藤原実方は、近衛中将でしたが、宮中でけんかをして奥州へ左遷さ れました。その実方が笠島の道祖神の前を通りかかった時、人から「下馬して参拝す るように」と注意されました。しかし、この神が出雲路の道祖神の勘当された娘だと聞 いて「そのような下級な女神ならば、拝む必要はない」と言ってそのまま通り過ぎまし た。その直後に、実方は馬から落ちて、馬もろとも死んでしまったとのことです。死んだ 実方は後に、雀になって都に帰り、御所の台所に現れたといいます。

 神主さんを訪ねましたが、幸神社との関係については何も伝えられていないそうで す。このように遠く離れた、さほど大きくない2つの神社が、ナゼ親子だとされたのか不 思議です。

2004年4月


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