十念寺(寺町通)の前に「曲直瀬道三墓所」の石碑が立っています。そのお墓は墓地
の奥にあって、時代が古いために今から見れば小ぶりなお墓です。
この曲直瀬道三(まなせどうさん)は「日本医学中興の祖」とされる戦国時代の名医で
す。西洋医学が入る前の日本の医学を確立した人で、道三の処方の漢方薬が今も使
われているそうです。
戦国・安土桃山時代に京都を制した権力者は、いずれも曲直瀬道三から生活指導
や治療を受けました。道三を重用した権力者には、足利義輝、三好長慶、松永弾正、
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康がいます。このことは、道三が医学だけでなく人間的
に特別に信用されていたことを示します。権力者の健康状態は、いつの時代でも最高
機密だからです。
一年ほど前に発行された新書本「戦国武将の養生訓」(新潮新書)は、曲直瀬道三が
毛利元就に贈った「養生俳諧」を紹介したものです。これは、120の和歌で健康的な生
活の心得を説いたものです。いくつか紹介しましょう。
酒とても よハぬ程にて 愁去り 心をたすけ 気も通うなり
(ほどほどの飲酒は、心を休める効果がある)
ゆあがりの 其ぬれ髪ニ いぬる人 頭風の共なり 目もまふぞかし
(髪がぬれたまま寝ると、頭が痛くなり目まいがするぞ)
2006年3月
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