岸駒は江戸後期の絵師です。正しい読みは「きし・こま」ですが、通常は「がんく」と呼
びます。北陸から上京して、独学で絵を学び、京都を代表する人気絵師になりました。
特に、虎の絵を得意とし、生きた虎を見ることが出来なかった当時とは思えない、リア
ルで迫力のある虎を描きました。岸駒は、描く絵も、本人の行動も、個性の強い人であ
り、また長命で83歳(一説によると90歳)まで生きました。
本禅寺(寺町今出川を下った最初のお寺)の中にある心城院は、岸家の菩提寺であ
り、岸家代々のお墓があります。そして、境内に岸駒堂があって、岸駒の像がまつられ
ています。これは、岸駒がなくなった一年後の天保十年(一八三九)に弟子たちによっ
て作られたものです。
この像は、等身大の像で、いかにも個性が強そうな岸駒の風貌を、写実的に表現し
ています。彫刻の技術が落ちていた江戸時代とは思えない、迫真の出来です。平成十
年には、アメリカのワシントン国立美術館で行われた江戸展に、江戸時代の彫刻を代
表する作品として出展されました。
2007年12月
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