大黒党は、室町時代から明治維新まで、塔之段付近を拠点に活動した陰陽師(おん
みょうじ)の一党です。室町・戦国時代の塔之段から上御霊に掛けての一帯には、いく
つかの唱聞師(しょうもじ)の村がありました。この唱聞師というのは、大衆の中で活動
した陰陽師です。陰陽道の呪術・儀式とともに、占い・萬歳・舞などの芸能を行うことを
生業としていました。大黒党は、塔之段の唱聞師の中で勢力を持ち、あるいは統括して
いたようです。しかし、断片的な記録しか残らず、その実態は謎に包まれています。
大黒家は、江戸時代に入ってからも塔之段(毘沙門町北部)に屋敷を構え、朝廷の
正規の陰陽師である土御門家(つちみかどけ)の配下として、朝廷の儀式も勤めまし
た。特に、宮中で一月十八日におこなわれる左義長という祭事では、必ず大黒党が舞
を行なうことになっていました。
江戸時代の始めには、大黒家が地方の陰陽師に対して免許を発行したことから、そ
の免許の権利を巡って、主家の土御門家と争ったことがありました。澤田ふじ子氏の
小説「鴉婆」(からすばば)は、この争いをヒントにして、土御門家と大黒党の配下の陰
陽師たちの活躍を描いています。
2008年1月
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