写真の不思議な形をした仏像は、廬山寺が所蔵する如意輪観音像(重要文化財)
で、高さが1.5メートル近くある大きなものです。仏像を見慣れた方ならば、この観音
像が、奈良の法隆寺に多く残されている飛鳥時代(聖徳太子の頃)の仏像に似ている
ことに気付かれるでしょう。細長い顔に笑みを浮かべるような口の形(アルカイックスマ
イル)や、垂れ下がった衣の独特の模様が、飛鳥時代風です。しかし、実際にこの仏像
が作られたのは鎌倉時代です。
種を明かすと、この仏像は、鎌倉時代に、飛鳥時代の仏像をコピーして造ったものな
のです。コピーの元も分かっていて、それは大阪の四天王寺の御本尊です。四天王寺
も、法隆寺と同じく聖徳太子が建てたお寺で、飛鳥時代に造られた本尊がまつられて
いました。しかし、四天王寺は何度も火災にあっており、この本尊はずっと昔に失われ
ました。廬山寺の観音像は、失われた四天王寺の本尊の姿を伝える貴重な像です。こ
の像は、通常は京都国立博物館に預けられており、以前は常設展示場の中央室に飾
られていました(常設展示場は現在建替え中)。
2008年9月
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