京極れきし再発見 59

  日本最初の映画スター「目玉の松ちゃん」






 
  出町橋と河合橋の間は、南北両側が公園になっています。南側は三角州でいつも にぎわっていますが、北側(家庭裁判所側)に入ったことがある方は少ないのではない でしょうか。この北側の公園の真ん中に、胸像が立っています。これは、日本最初の映 画スターである尾上松之助(おのえまつのすけ)の銅像です。

 尾上松之助は、旅回りの役者でしたが、日本で劇映画が作られ始めた明治四十一 年に、牧野省三監督に誘われて映画に出演し、すぐに大スターとなりました。当時は無 声映画で、目を見開く姿が印象的だったことから「目玉の松ちゃん」の愛称で親しまれ ました。当時の京都映画は時代劇専門で、大石内蔵助、水戸黄門、国定忠治、鞍馬天 狗など、あらゆる時代劇のヒーローを演じ、今の時代劇ドラマの元祖といえます。大正 十五年に亡くなるまでに、千本以上の映画に出演したと言いますから、一週間に一本 以上を撮っていた計算になります。ただし、現在フィルムが残っているのは、わずか 四、五本です。

 鴨川公園の胸像は、松之助が、自費で長屋を建てて貧しい人を住まわすなど、慈善 事業を行ったこと顕彰して昭和四十一年に立てられたものです。そのため、背広を着 ています。


2009年9月


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